「雪村ー、ちょうどいいところに」


昼休み、ちょうど職員室の前を通りかかった時だった。


担任の山川先生に手招きされて、嫌な予感がしながらも恐る恐る職員室に足を踏み入れた。


「夏休みの宿題を運ぶのを手伝ってくれ。各教科の先生から預かっていて、とてもひとりで運べる量じゃないんだ」


そう言って先生が指差したのは、問題集が山積みされたデスクの上。


「これ全部ですか?」


その山は五つもあって、とても一回で運べる量じゃない。


「それの一部だけでいいぞ。あとは男子に頼むから」


「わ、わかりました」


面倒だなぁ。


しかも、職員室から教室までは結構離れてるんだよね。


そう思ったけど言えるはずもなく、仕方ないかと思い直して、渋々運ぶことに。


一階から二階、二階から三階へと階段を上る。


「はぁはぁ……」


だんだん腕がだるくなってきて、息切れまでしてきた。


さらには足元がふらついて、まっすぐに歩けない。


なんでこんな大変なことを私に頼むかな。


たまたま通りかかっただけなのに、タイミングが悪すぎたよね。


それにしても……お、重い。


血流が悪くなっているんじゃないかと思うほどの圧が腕にかかっている。


でも、もう少しだから頑張れ私。


教室まであと一歩のところで、急ぎ足で教室から出て来た人と肩がぶつかった。


「う、わぁ」


ヨロヨロと足がよろけて態勢を崩す。


「わっ」


わわ、どうしよう……。


後ろに……倒れる!


でも、問題集だけは死守しなければ……っ!