「さ、食おう。」

三上は冷めきったスープを口に運んだが

元々冷製のものだ。

逆にぬるいだろう。

俺が何か言うのを待っているような

微妙な間を感じた。

仕方なく俺もスープを口にした。

舌触りが滑らかでクリーミーな味わいだ。

かなり濃厚なウニの香りが

スープが喉を通ってから鼻に抜けた。

「一輝、美味いだろ?」

「美味いよ。」

俺は素直に答えた。

食事中は多良の話題に触れず

三上は高級なフランス料理のフルコースを堪能したようだ。

俺は美味さ半分思考で半分といったところだ。

考えずにはいられない自分の身に降りかかった拒否したい内容だ。

飴細工のような繊細な装飾を施したデザートを前に

俺は一言放った。

「断りたい。」

「今はだろ?」

三上の即答に俺は首を傾げた。

反論しようにも手持ちの材料が極少だ。

「とにかく一度西村家へ顔を出した方が手っ取り早い。」

三上はそう言うなり日時を指定した。

俺は食い下がった。

「理由を知りたい。」

「直接聞いてくればいい。」

「行きたくない。」

「一輝、俺が選んだ男だ。間違いない。」

何に対してどう間違いないのだろうか。

俺は三上の真意がわからなかった。