小鳥のさえずる声が心地よく聞こえる朝。

爽やかな風と共に響くのは……



「あいつ、遅すぎる!!!!
2時間半も遅刻なんだけど!!!」



透き通った怒りの声。
女の子と言っても通じるほど、透き通った白い肌と瑠璃色の瞳。

声変わりをしているのかしていないのかは分からないが、男にしては高く女にしては低い……だが、鈴を転がしたかのような綺麗な声。

その可愛らしい見た目に反し、拳を握りしめ怒りを顕にしているのは瑠彩琳埜。



「いつものことだ」



そんな琳埜を漆黒の瞳が呆れたように見つめる。

その声も瞳と同じように呆れたような感情を含んでおり、また琳埜と同じくどこか怒りの感情も含まれている。

だが、表情は何を考えているか分からないこの少年は虎珀琉飛。

そんな2人が怒りを向ける相手は未だに来ない。

一体どこで道草を食っているんだ……と琉飛は思う。

待ち人の過去を知っている琉飛は、待ち人が昔から今のように人を待たせる性格であったわけではないことを知っている。

だからこそ、琉飛は己が抱いた苛立ちを待ち人へぶつけることは殆ど無い。
怒るのはいつも琳埜の役割だ。

もちろん、あまりに酷い場合は琉飛がキレるのだが……