飛吹一族。

風の国の忍で、風の国の為に生き風の国の為に死んでいく一族。

そこに心など存在せず、人形のように任務をこなす。
それが彼らの周りからの評価であった。

だが、一族はたった一人の忍に滅ぼされた。
その犯人は当時まだ幼子であった鳳舞と琉飛のみが知っている。

2人は犯人の名を言うことは無かった。
ただ、寂しそうな瞳が風の国の忍や長達を射抜いていたという。

鳳舞は一族の唯一の生き残りである。
何故、一族が滅ぼされなくてはならなかったのか。

鳳舞は恐らく知っている。
幼い頃は笑顔の絶えない優しい子だった鳳舞。

事件以降、一族を一人で背負うことになった鳳舞は己を殺し一族の名を背負い生きていくことを選んだ。

その代償として表情が、表に出にくくなってしまっているのだが……



「一族の書物。
今更……何を暴こうというのか」



静まり返った闇の中でポツリと呟く鳳舞。

感情の読み取れないその表情は、いつもの気だるげさを隠しており、ただただ無であった。