ジリジリと暑い。
夏真っ盛り、太陽さんがフル稼働するこの季節が何だかんだ言いながら一番好きだったりする。


「あっつー」

「声に出すな、暑さが増す〜」

「もっとスピード上げろ、風をくれ!風!」

「文句言うな!てか、男のお前がこげよ!!」


私の自転車の後ろに、当たり前みたいな顔して乗っかって、そのくせもっとスピード上げろと文句までプレゼントしてくれた藤井は、同じクラスの仲良し男子でいわゆる私の好きなヤツだ。


「ばっか、男がこいでたらカップルの2ケツに勘違いされんだろ?それに比べてどーよ!女がこいでたらそんな誤解も生まれないだろうし、何より俺が楽!」

「藤井……いい加減、殺意芽生えそう」


藤井を好きになったのは1年の体育祭。藤井の頑張りでリレーが大逆転勝利をおさめたあの日。


──ズッキュン


なんて簡単な音と共に、呆気なく恋の落とし穴へとハマってしまったのだからどうしようもない。

まぁ、肝心な藤井は私のことなんて本当に本当に何とも思っていなくて……今日だってこの通り、私を女子と思っているかも怪しいレベルの発言を『そのテンションで言うな』ってくらい軽くぶちかましてくるんだけども。


「へいへい、さーせん!明日は俺がこぐから許せって」

「あ!藤井それ、昨日も言ってなかった?」


私の言葉に『やべ』と声を漏らした藤井は確信犯で、そんな確信犯に気づきながらも見逃してしまうのは、他の誰でもなく私なんだけど。