「……そうか、僕は負けたか!」


あからさまに空元気だ。

鬼龍院くんはニパッと笑うと、ぎこちなく言葉を続けた。


「き、鬼龍院くんっ」

「なんだね近衛クン?」


いざ声をかけてみたものの、なんて言えばいいのかが分からない。

だけど私はこの時、鬼龍院くんの名前を呼ばずにはいられなかったのだ。


「下手な慰めはよしてくれよ近衛クン? 僕は一番じゃない。それだけが事実であり、それだけが結果だ」

「でも、それでも凄いよ鬼龍院くんは! 私なんてテスト全然だったし……鬼龍院くんは十分……!」

「僕はこんな半端なものを求められてはいない! 鬼龍院財閥の跡取りとして、僕は……っ」


どうやったら、鬼龍院くんを救える……?



「……半端なんかじゃないよ、あんたは」



一歩、彼方が鬼龍院くんに近づいた。