「あの……会長代行、お訊ねしてもいいですか」

「何だ?」

車の運転をしながら会長代行は抑揚なく呟く。

会長代行は会長代行専用の車を使わない。

自分自身の車を使用し、私を助手席に座らせ、自ら運転する。

掠れ気味の嗄れた細い声は、常時、酸素吸入していることと、心因性の喉の不調で数年、全く喋れなかった後遺症らしい。

会長代行は週に3度、循環器と呼吸器科の診察後、発声のリハビリを受けている。

「あの……詩乃様はお姉さまですよね?」

「ああ、そうだが」

会長代行は平然と答える。

「いつもあんな風なんですか?」

「……何が言いたい?」

「会長が会長代行のお身体のことを話されていた時も、詩乃様は酷く感情的で」