今日はいつもより早く帰れたほうか、と時計を見上げる。


コンチツェルンに顔を出し始めて以来、アフター6は皆無といっていい。


毎晩、倒れこむように、ソファーに体を沈める。


1歩も動きたくないと思うが、そうもいかない。


月刊誌に連載の原稿、週2掲載の新聞小説、女流作家沢山江梨子とのコラボ企画「空シリーズ」など執筆もある。


雑誌のインタビュー取材も幾つかオファーをもらったが、忙しさと体調不良を理由に断って正解だったと思う。


パソコン教室で週1通ってくるミステリー作家西村嘉行先生と、ハードボイルド作家梅川百冬先生からも気遣いを頂いている。


円山出版社編集部での上司、黒田芽依沙女史は「空シリーズ」原稿を預けるたび、ひどく心配し不安顔をする。


身内で同居している詩乃が社に押しかけ、心配するのは、無理もないとは思う。