「テキスト51ページを開いてください。今日はページレイアウトについてーー」


週3日、会長代行が講師のパソコン教室の時間は、いつもより生徒が熱心だ。


ピンマイクをスーツの襟に付け、手順をホワイトボードに書きながら、丁寧に説明していく。


会長代行は1通り説明を終えると、必ず生徒1人1人のパソコンを観て回る。


酸素ボンベを入れたキャリーバックを片手で転がしながら、机と机の間をゆっくり歩く。


会長代行の身に纏ったグリーンノートの仄かな匂いが爽やかに、微かに香る。


「──ここをクリックすると、文字数、行数、行間などの設定画面に切り替わります。数字を少なくすると……」


操作に戸惑っている生徒には声を掛け、細かい指示をし、場合によってはマウスを持つ手に、そっと手を添える。