『朱里、朱里』と萌ちゃんにドアを指差され、ふと教室のドアに視線を移す。


 私達の会話を聞き耳立ててたみたいに、鶴橋くんがドアの入り口に寄りかかっては無表情で私を見ていた。



「鶴橋くん………」



 ……………声くらい、かけてくれて良かったのに。



 昼休み、外のベンチで祐樹との会話の一連を聞いてたから、鶴橋くんに向ける表情がついつい強ばってしまう。



 明らかに、鶴橋くんに対するイメージが、違う何かになっていってるのを感じた。


 早く来いとばかりに私を見ているので、『じゃあ、もう行くね』と、祐樹に素っ気ない態度で接し、その場を離れた。



 一緒に帰るも無言。
 …………気まずい。



 会話がない。


 話すのが恥ずかしいとか、そういうんじゃない。


 話したくても鶴橋くんの何か、地雷を踏んでしまいそうで、言葉が出てこない。



 ……………私、何かしただろうか。