教室へ戻る途中の階段で、不意に大和が歩調を緩めた。


「なぁ優衣」


「なに?」


「もしも教室に戻ることが辛いなら、このまま校舎内のどこかに隠れててもいいんだぞ?」


その言葉にあたしは瞬きを繰り返した。


教室へ戻らないということは、死を意味している。


「でも、それって……」


「大丈夫。お前と2人なら俺は怖くない」


力強くそう言った大和に、あたしの胸がジンッと熱くなった。


大和がそこまであたしの事を気にかけてくれているなんて、思ってもいなかった。


ずっと、片想いだと思っていた。


「大和……ありがとう。でも、大丈夫だから」


あたしはハッキリとした口調でそう答えた。


大和があたしと死んでくれる気なら、あたしは大和と一緒に最後まで生き残る方を選ぶ。


「教室に戻ろう」


あたしはそう言い、大和の手を強く握り直したのだった。