ケータイ小説 野いちご

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なまえをよんで

妻はどこへ

翌朝、目を覚ましてリビングに行く。

咲が帰って来た様子はない。

ダイニングテーブルの上は昨夜のまま。

そこから少し朝食を摂って、残りはラップをして冷蔵庫に突っ込んだ。

何品もある料理の数々。

ー悪い事したな‥。ー

今さらながら、罪悪感がもたげてくる。

昨夜は酒が入っていたせいもあって、頭が回らなかった。

結婚記念日ってわかっていて言わない方も悪いだろうくらいに思っていた。



大学生の長男は東京に出て一人暮らし。

長女は気をきかせて友達の家に泊まりに行っていた。

向かい合って2人で結婚20周年を祝うため、時間をかけて用意したんだろう。

いつまでも帰って来ない俺を、どんな気持ちで待ってたんだろう。

『お母さんじゃない。』

と言って泣きそうな顔をした彼女。

名前を、呼んでやれば良かった。

もう何年も呼んでなくて照れくさかった。

でも、『咲』って呼んでやれば良かった。

『どこにいるの?』

LINEを送ってみたけど、やはり既読にならない。

恥を忍んで、子供達にLINEを送る。

『お母さんが昨夜から帰って来ない。
どこにいるか知ってる?
知ってたら、帰るように言って。
お父さんは反省してるから。』

‥‥‥。

父親の威厳なんてあったもんじゃない。

でも、2人からの返信はなかった。

泊まりに行くとしたら、実家か勇太のところか‥。

でも、実家は無いだろう。

親に心配かけるだけだし。

勇太に電話してみるが出ない。

LINEも既読にならない。

申し訳ない気持ちと同時に、主婦が、夫と子供を放ったらかして何やってんだって気持ちもある。

やるせない想いで、足取り重く会社に向かう。

通勤途中、勇太から、

『俺は知らない。』

と返信があった。

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