ケータイ小説 野いちご

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なまえをよんで

帰って来て

翌朝。

やっぱり咲は帰っていない。

俺は昨夜、こんなLINEを咲に送った。

『咲、心配しています。
元気かどうかだけでも連絡をください。
結婚記念日を忘れた事は、本当に申し訳なかったと反省しています。
咲が帰ってきたら、やり直させて欲しい。
咲がいない家の中は、灯が消えたようです。』

あえて、帰って来てとは書かなかった。

『咲』って、3回書いた。




今日も、仕事を早く終わらせて早めに帰宅した。

飲みに誘われたけど、とてもそんな気にはなれなかった。

やれば出来るんじゃないか、俺。

会社を早く上がる事も。

飲みの誘いを断る事も。

咲は、帰って来るか来ないかわからない俺の為に、毎日夕飯の用意して待ってたんだよな。

早く、帰れば良かったな。

せめて、連絡してやれば良かった。




家に帰ると、真っ暗だった。

亜美からは、友達の家に泊まるとLINEが入っていた。

俺と2人は嫌なんだろう。

又、一昨日咲が作ったご馳走の残りをチンして食べた。

片付けて、風呂に入って、1人、テレビを見る。

このリビング、こんなに広かったか?

そろそろ寝ようかと寝室に向かおうとしたら、スマホにLINEが入った。

ホーム画面に

『元気です』

と表示される。

ー咲からだ‼︎ー

待ち焦がれた彼女のLINEを開くと、

『元気です』

『お父さんは元気ですか?』

『勝手な事をしてごめんなさい』

『パートは休みをもらっているので大丈夫です』

と続けざまに送られてくる。

ーお父さんー

ものすごい違和感。

そうか。

咲は、俺を『お父さん』と呼んだ事はなかった。

子供達に向かって『お父さんに持ってって。』なんて言うことはあっても、俺に呼びかける事はなかったんだ。

いつだって、名前を呼んでくれた。

今さらながら、間抜けな自分に辟易する。

ーお父さんー

これは、精一杯の咲の嫌味なんだろうか。

彼女は、嫌味を言うような人間じゃない。

だったら、彼女をそんな風にしてしまったのは、俺なんだろうな。

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