だから、父様に李樹が好きだと伝えられなかった。
認めてくれないのが、心の何処かで分かっていたから。
「少なくとも俺は、それが分かってたから1回も恋愛なんてしたことないよ」
政略結婚で苦しみたくないからね、なんて三芳くんは冷静だ。
「でも君を見てたら俺も恋愛してみたいって思うよ」
「…へ、」
「だって彩葉ちゃん、可愛いし」
カタ、と少しテーブルが揺れた。
それは三芳くんが立ち上がって私の手を取ったから。
「よろしく、俺の未来の花嫁」
そんなキザなセリフでも、三芳くんだと何でも成立してしまうような気さえしてくる。
それほど彼はかっこいい。
けど。
─────グイッ
「三芳様、過度なスキンシップはご遠慮願います」
私は、やっぱり李樹がいい。
私の手を取った三芳くんの腕を、李樹は掴んで引き離した。
「俺、彼女の婚約者なんだけどね」
「申し訳ございません。"過度な" スキンシップでしたので」
「手厳しいなぁ、君は」
クスリと笑う三芳くん。
私の角度から李樹の表情は分からなかった。