東京都内としては信じられないくらい安い値段で中古の家を買ったある夫婦がいた。



その奥さんが掃除中に、廊下の突き当たりに転がっている赤いクレヨンを見つけた。



自分たちに子供はいない。



おおかた前の住人の忘れ物だろうと、深く考えずに捨てた。





数日後、同じ場所に落ちているクレヨンを見つけた。



先日捨てたものと同じに見える。不思議に思うと同時に、入居前の下見に来たとき、案内してくれた業者がやはりここでクレヨンを拾い上げていたことを思い出した。