~海琉~

杏光が最近おかしい。



何がおかしいって言われると難しいけど、なんかおかしい。



いつも通り一緒に学校に行って一緒に過ごしているけど、俺に対する雰囲気がいつも通りじゃないような…。



杏光は、俺に対して普通に接してるって思ってると思うし実際ほとんど普通と同じなんだけど、15年間毎日一緒に過ごしてきて、些細な変化でもすぐに気づくからね。



「杏光」

「なに?」

「具合でも悪い?」

「いや、そんなことないけど」



杏光のおでこに手を当てる。



「別に熱くないね」

「そりゃそうだよ、元気だもん」



おでこから手を離して、少し崩れた杏光の前髪を手ぐしで整えた。



やっぱりなんか変!



言語化できないくらいには些細な変化だけど、具合が悪いんじゃなければこの違和感はなに?



「そういえば、今日バイトの面接って言ってたよね?」



朝の登校時間。



歩きながら、杏光が聞いてくる。



「そうそう、カフェのね」



夏休みが近いから、これを機会に社会勉強がてらバイトしてお金を稼ごうと思ってる。



あんまり家に負担かけたくないし…。



自分で新しく何かをはじめることに、少しワクワクもしてる。



ランチがおいしいって評判の人気カフェがバイト募集してたから、面接に行くことにしたんだ。



キッチンとホール、両方やらないといけないみたいだけど頑張りたい。



杏光といつも通り下駄箱で別れて、教室に向かった。



球技大会が近くて、最近はどのクラスでも朝練をするために朝が早い。



当然俺のクラスも杏光のクラスも集合時間が早くて、いつもより一時間くらい早く登校した。



「海琉、グラウンド行こうぜ」



教室に着くなり新太に言われる。



ちょっと待って、早いよ…。



慌てて荷物を机にしまって、せかされるようにグラウンドに出た。



グラウンドはすでに人がたくさんいて。



俺たちのクラスでも種目ごとに集まった。