「ふぅ…」

少しばかりベルの血を飲み、ダンドリッジは普段の姿に戻る。

とはいっても、傷も消耗した魔力もまだ回復していない。

『取り敢えず元の姿に戻る』魔力を補充しただけだ。

「ギリギリだったからな。リトル・デーヴィッドを放った後、自らの寿命を削り取って魔力一握り分に変換し、蝙蝠の姿を留めるのがやっとだった」

再生や切断された腕の連結など、無茶苦茶な肉体のようだが、ダンドリッジにもちゃんと寿命はあるのだ。

「ともあれ、優勝は見事だった。ダンドリッジ君。君が名実ともに、ヒノモト公認の宇宙最強だ」

「フン」

大久保の言葉にも、ダンドリッジは特に嬉しそうな顔はない。

「内輪の喧嘩祭りで勝った程度で、そこまで大仰な肩書きを貰う気はない」

「何よダン、もっと喜んでよ。今日はその…いっぱい私の血を飲んでいいのよ?」

ベルもダンドリッジを労うように言うが。

「この大会で、如何にマスターの魔力に依存しているかがよくわかった」

ダンドリッジはベルを真正面から見つめる。

「俺にはマスターが必要だ。俺の傍から離れるな」

ダンドリッジは自分の都合で言ったに違いないが、ベルは面と向かって顔が見られなかった。

「さて…優勝賞金の勅使河原埋蔵金だが…」

「それは」

ベルが大久保の顔を見る。

「穢土の復興資金に充てて下さい」

「いいのかマスター」

ダンドリッジの問いかけに、ベルは頷いた。

「3000億なんて、私のお財布には多過ぎて入らないもの」