母が泣いている。

仕方なくリュートは皇都にある離宮に戻ってきた。

「おかえりなさいませ、リュート様」

侍女達が勢揃いで恭しく首を垂れるのを、リュートは不服そうに鼻息で返す。

嫌いなのだ、こういうのは。

もうちょっとさあ、なんかこう、『あらおかえり、もう、どこ行ってたの、ほっつき歩いてさ』みたいなフランクな感じがいいのだ。

なのに、これじゃあ堅苦しくていけない。

だって、そうだろう?

俺は勇者の子息とか、いいとこのボンボンみたいな自覚は全くないんだから。