うるさいくらいに鳴り響く鼓動の音を雪人に聞かれないように、陽は雪人が被せてくれたジャケットを身体に引き寄せた

ーー・・・

重い沈黙が車内にたちこめる

雪人は窓の外に顔を向けて、黙っている

「・・・あ、あの、、、」

不安そうな、か細い声で、陽が声を漏らした

「・・・」

何も答えてくれない雪人に、陽は眉を歪めて俯いてしまった

窓越しにその様子を見た雪人は、小さく息を吸って

「・・僕は、、」

外の騒音にかき消されそうなほど小さな声で、しかしはっきりと言った

「・・今夜は、あなたを帰したくない。」

雪人は陽の言葉を待たず、エンジンをかけて車を発進させた

走っている間も車内は沈黙のままで

(・・ど、どうしよう、、)

さすがの陽もこれから起こり得ることは安易に想像ができた
緊張で身体が強ばり、ぎゅっと雪人のジャケットを握りしめた

「・・柊木さん、脱がせた僕が言うのもなんですが、風邪を引いてしまうといけないので、服を整えて僕のジャケットを着てください」

今までとは違う、優しい声色でそう言われて、陽は大人しくその言葉に従った