ケータイ小説 野いちご

【完】『幸福論』

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しょっちゅう人は出入りした。使っている断裁機の刃を研ぎに来る刃物屋、綴じ込みの機械を修理するメーカーの担当、印刷屋のルート回り、社用車の営業…と毎日誰かは大人がやって来る。

自ずと娘のみなほは、大人の目に注意を払う、あまり可愛いげのない性分になっていた。

みなほの実家の有村製本所は特に仕事が早かったのもあって、大手が嫌がる量の少ない振り込み用紙や、書式の決まっている神社の書類の綴じ込みやら、大した金にはならないがとにかく忙しい町工場である。

父親はみなほを早く仕事に出したかったらしく、学びたかった服飾の専門学校には行かせてもらえず、高校を出ると医療の研究所の臨時に雇われた。




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