全く眠りにつけないまま空は刻一刻と白んでいく。


まだ自分の瞳が光を受け付けることに安心していたのも束の間。

階段を駆け上がる音が耳に飛び込んでくる。



……兄貴?



少し軽い足音に首を傾げた俺の耳に、



「優羽っ! 開けて! 優羽っ優羽っ!」



悲壮な声で俺を呼ぶ光来の声と、扉を何度も叩きつける音が響いてきた。



光来っ?



思いもしなかった声の主に、胸の中がざわめき始める。



「……ヤだ。帰れっ」


光来は知ってしまったのかもしれない。
俺の病気のことを。



だったら尚更、会ったりしたらダメだ。



光来のことだから、困ってる俺にきっと手を差し伸べようとしてくれる。


それじゃ……ダメなんだ。




「優羽っ……お願い……」


「…………」


「……拒まないでよ……」



嗚咽混じりの悲痛な声に胸が掻き毟られそうだ。