優羽の言いたいことはわかった。
ホントにモニターとして、わたしに恋人ごっこしろって言ってる。
「……いいよ。どうせ彼氏も居ないし」
優羽への気持ちを隠しながら優羽が他の女の子に触れるのを、指をくわえて見てるだけなんてもう我慢出来ない。
「じゃあ、今日から一週間。光来は俺の彼女な」
こう言ってにっこり笑う優羽が、やっぱり好きだ。
学年ナンバーワン人気のプレイボーイをやってない、わたしだけの幼なじみの顔。
「……変なことしないでよ」
「んっ? しないよ?」
そうやって爽やかに笑ってみせるのが怪しい。
あくまで一週間だけのお試しカップルなんだから。
本気になんてなったら、今までの好きだった気持ちの分だけ余計虚しくなる。
どうせ。
一週間後には今まで通り、ただの幼なじみに戻るんだから……。
飲みかけのカフェオレをテーブルに残して、わたしは優羽に手を引かれて店を出た。
世の中ってのは不思議だ。
来るときはただの幼なじみだったのに、
向かい合ってカフェオレとカプチーノを飲んだら、
帰りにはカップルになってるんだもん。
何年ぶりかに繋がれた手を握り返しながら、わたしはずっと想い続けてきた背中を見つめた。