「なー、人口密度高ぇしリビング行かね?

こんだけ人数集まってると、さすがに暑い」



「莉央ちゃんほんと空気読めないねえ」



ふっとため息にも安堵にも似た息を落とした椛がやわらかく瞳を細めて、「姫」とわたしを呼ぶ。

何も考えずに視線を持ち上げて、首をかしげた。



「ルアの面倒見てくれて、ありがと。

ルアが姫を傷つけることも姫がルアを傷つけることも絶対にないって分かってたから、ルノじゃなくてルアの方に姫を送り込んだのは俺の勝手な判断」



「………」



「いい方向に進んでよかったじゃねえの。

……で、るーちゃん。いつまで弟に抱きついて泣いてんだよ~」



「……泣いてません」




即答してるけど、さすがにそれは言い訳にしては厳しいと思う。

肩が震えている上に声も震えてる。泣くくらい安堵したルノの姿を見れば、ルアも苦笑しているけれど、さすがにもう塞ごうなんて思わないだろう。



「……なきやんで、ルノ」



「だから、泣いてない……」



「……ないてるじゃん」



「……うるさい」



拗ねたようにつぶやくルノは、涙を拭ってから顔を上げる。

澄ました顔をしているけれど泣いたせいで、さすがに目が赤くなっていた。



その薄ら赤くなった瞳が、わたしに向く。

それから、ルノはふわりと微笑んだ。……ルアと、よく似た表情で。