「……先輩の顔見たいです」
「ずるい。やっぱりもちくんは私の心臓潰す気だ」
そんな物騒なこと考えるわけないのに、腕が離れて後ろから背中を軽く叩かれる。
その動作が可愛くて叱ることができない。
先輩って年上なのに、時々子どもっぽい一面を見せるときがあって、俺はそういう先輩にとことん弱い。
「そっち向いていいですか」
「……うん」
身体を先輩の方へ向けると、いじけたような表情で目を伏せている先輩の顔を覗き込む。
「先輩、本当は少しショックでした?」
「……聞かないでよ」
そうだった。答えなんて聞かなくても、その表情や急に甘えてきたことでわかりきっていた。
「ごめんなさい」
先輩は我慢をすぐしてしまう。多分俺が年下だからっていうのもあるんだと思う。
頼りないけど頼られたい。
けど、今の俺はまだ頼られるまでの強さがない。
それでも————いつかきっと頼られるような男になるんで、今は自分の精一杯をさせてください。
「先輩、ぎゅってしてもいいですか」
「……して」