あれから、何回かびしょ濡れ店長ホストは、自分をフルコースに誘ってきた。

全部おごりだ。

「もうすぐ、地元に帰るのに、私におごってていいの?」

「お金のことは、心配するな。」

「彼女とかいないの?」

ふいに、聞いてみた。

「ホストの間は、彼女作らないって決めてたし、俺、友営だから。」

「友営?」

「お客さんと、友達になって、わいわい呑むこと。」

「なるほど。」

「でも、透子さんのことは、好きだよ。」

「またまた~さすがホスト。」

「本気で言ったのに…。」

びしょ濡れ店長ホストは、寂しそうに言った。

ホストが言う言葉を本気にしては、いけない。

だけど、今まで、全部おごりだ。

私は、お客さんでは、ないのかな?

仕事中も、びしょ濡れ店長ホストのことを考えてしまう自分がいた。