とある夏の日。



小さな少女に話しかけた男がいた。




「お嬢ちゃん、これをあげるよ。」


泣きじゃくる少女に男が差し出したものは野球ボール。


少女は首を傾げる。


「おじさんがとても好きなものなんだ。」

そう言いながら頭を撫で、屈んでいた足腰を持ち上げた。



「またいつか会えた時、お嬢ちゃんも野球が好きになってたらいいな。」



背を向けて離れていく大きな背中は小さな記憶の中に深い爪痕を残した。

そして気がつけば少女の涙は止まっていた。