螢side

「ねぇ、哀川さん。」
何故か名前を呼んでしまう。

_______________じゃあ、俺がもらっちゃおうかな。



「ねぇ、もし僕が哀川さんのこと好きっていったら……。どうする?」





「えっ………。」
後ろにいる哀川さんが声を漏らす。
驚いたのかな。
僕は後ろの哀川さんを見る。

耳まで真っ赤。
なんか、からかってみるのも面白いかも。


「何本気にしてるの。冗談だよ。」
と、真顔で告げれば慌てる哀川さん。
「え、あ、そ、そうだよね。緋山君が私なんか好きになるわけないよね。」
えへへ、と頬をかいて笑う哀川さん。
冗談じゃないけどね。と思いながら前に向き直す。きっと、今言っても哀川さんを困らせるだけ。


_______________でも、少しは意識してもらえたかな。
なんて、考えてみる。
「はい、続きやって。」
「あ、うん!」

そして、髪を乾かし終わったらまた各自自由の時間。
明日は土曜日。
哀川さんはバイトか。

そういえば、僕が人に好きって言うのって親を含めて初めて、か………。


昔の苦い記憶が脳裏にちらつく。
それをすべて忘れるために瞼を閉じて、眠りについた。