先生が出ていく気配とか。

そんなの気づけないほどに、私の頭の中は真っ白だった。

我に返ったのは、誰かが「もういいぞ」と危機が去ったのを教えてくれた声。

金縛りのように動けなかった私は、離れていく二ノ宮に反応することもできず、瞬きを繰り返す。

いつの間にか押入れから出ていた柑菜に「どうしたの?」と声をかけられて、ようやく起き上がるも、彼女の質問には答えることができなかった。

他の男子と私たちを逃がす算段をしている二ノ宮をまともに見ることもできない。

ただひたすらに強く打ち続ける鼓動を感じるにも関わらず、これは現実なのかと疑うほど、混乱していた。


「行こう、美羽」


柑菜に促され、私は二ノ宮と言葉も交わさないまま、囮役の男子たちが先生を誘導しているうちに部屋に戻った。

すでに寝息が聞こえる室内はとても静かで。

みんなを起こさないようにそっと歩き、自分の布団の上に座った。

そして、無事に戻れたことに安堵しつつも、まだ少し暴れている胸をそっと手で押さえる。