カエルの家に来て数時間が経過していた。


カエルは今テレビのボクシング中継に夢中になっている。


不思議と、そのテレビが映し出すものはすべて古いものばかりだった。


画面上で試合をしているのはとっくの前に引退した選手たちだ。


カエルにその疑問を投げかけると「このテレビは自分が活躍していた頃の記憶を映し出しているからだ。現代の模様を流しているわけじゃない」と、言われた。


僕はまた半分頷き、そして半分首を傾げた。


とにかく、カエルが昔のボクシング中継に夢中になっている間、僕はこっそり家を出た。


懐かしい祖父の家を背中にして歩き出す。


この町へ来た時よりも更に日は落ちていて、もうすぐ真っ暗になってしまうだろう。


暗い夢は好きじゃなかった。