紅緒の目覚め、そして始祖の転生があることが知れると、黒藤の周りは一気に慌ただしくなった。
 

黒藤が転生を保護していると、すぐに知れ渡ったのだ。
 

一目逢ってみたい、どのようなお人なのか、と、黒藤への文が山と届いたのだ。


「おーおー、真紅は大人気だなぁー」
 

小路一派の各家から届く文をまとめてぐしゃりと潰した黒藤は、庭で水やりをしていた縁に声をかけた。


「縁―、暇なときでいいから、これ燃やしておいてくれ」


「これ? ……いいの? そんなの燃やしちゃって。黒藤がそんな態度だから陰口叩かれてんのよ」
 

腰に手を当てて怒る縁だが、黒藤は一切意に介さない。


「ごみだ。ちょっと出てくるから、留守番頼む」


「わかった。昏くならないうちに帰ってきてねー」


「おう」
 

黒藤は一つ肯き、羽織を手にして庵を出た。