それから、若葉に対する嫌がらせはどんどんエスカレートしていった。


若葉の下駄箱に苦手な虫を入れたり、廊下に掲示されている若葉の写真に落書きをしたり写真をビリビリに破いたり。


しかも日を追うごとに、嫌がらせに加担するメンバーが増えてきている。


由良や秋帆はもちろん、ネネやえる、クラスメイト全員、それからクラスメイト以外の女子全員が若葉への嫌がらせに加担しているのだ。


私は若葉が悪いことをしていないと思っているのだが、クラス全員はなかなか耳を貸そうとしない。


とくに由良と秋帆にはこんな言葉を返された。


『抹里は優しすぎるの! 朝丘に抹里の優しさを教えてあげないと気が済まないの!』


『本当、由良の言うとおり。抹里をバカにするかのようなことを平気でする朝丘は人間としてクズだっつーの!』


いまだに若葉を悪者扱いしているようだ。


若葉にも今の気持ちを聞こうとするが、その前に誰かに囲まれて話せなくなる。


取り囲む生徒たちのうちの何人かは若葉の顔を見て舌打ちをしたり唾を吐きかけるようなこともした。


「調子に乗るな!」


「あんたのその汚い手で榎本さんを触るなよ!」


罵声を浴びせたあと、その子たちは一斉に若葉を足蹴にした。


若葉を蹴る子たちをそっちのけに、駆けつけた他の子たちが私を引っ張って他の場所まで連れた。