夜が白んでゆく。 「もうすぐ明け六つか」 急に。 奇妙ないびきのような呼吸になった。 「…八重さんに」 何かを言いかけて、川崎は事切れた。 「…」 手塚は無言でかぶりを振った。 「岸島…帰るぞ」 手塚と岸島は、明け方の町を三百坂めざして歩いた。