その二日後。


迎えたバレンタイン当日、紅月くんの周りは朝から凄い騒ぎになっていた。


「王子、私のチョコ受け取って下さい!」


「私のも、良かったら受け取ってくれる?」


「もちろんだよ、ありがとう」


7組の教室前の廊下で、癒し全開のキラキラスマイルを浮かべる紅月くんと、その笑顔に心を射抜かれてる女の子たち。


同じような会話のやり取りを目撃したのは、これで何度目だろう?


もう放課後だと言うのに、紅月くんのもとにやって来る女の子は絶えない。


「今日一日で、どれだけの女子が王子にチョコ渡してるんだろ。あんなに貰って食べきれるのかな、王子は」


少し長引いた体育の授業から教室に戻る途中。


紅月くんに群がる女の子たちの横を通り過ぎた後、紫葵ちゃんは冷ややかに呟いた。


確かに、相当な量だよなぁ…。


食べても食べても終わらなさそう。


それぐらい、学校では絶大な人気があるってことだよね。