「あ、高原さん!」

ようやく落ち着きトイレから出ると、ちょうど廊下を歩いていた後輩の岬(みさき)くんが私に気付き、声を掛けてきた。

「あ、岬くん。どうかした?」

「ちょっとこの資料のデータを出して貰いたいんだけど、今大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫。戻ったらすぐ出すね」

「ありがとうございます!」


そのまま歩いて戻ろうとすると、岬くんが唐突に言う。


「……高原さん、もしかして泣いてました?」

「え?うそ?」

そんな!岬くんにバレるなんて!

トイレから出るときに、目が赤くなってないかちゃんと確認したはずのに。

思わず顔を手で覆うと、それを見た岬くんがプッと少し笑った。


「……大丈夫、たぶん他の人は気付きません。僕がなんとなく泣いてたんじゃないかって、気になっただけですから。でも正解でしたね」

「どうして分かったの……」

「いや、最近高原さん無理しているように見えて。いつもの元気がないですよね」