~~~~~~

 モデルルームの打ち上げは、現場の人が中心に三十名近く集まった。

 大手の居酒屋チェーン店を会場に、幹事の私は会費集めに追われていた。


「矢崎さん! 課長が部長に呼ばれて少し遅れるから先に始めていてくれって!」

 一緒に幹事をやってくれている姫川さんの声だ。


「はい! 分かりました」


 どのくらい遅れるのだろう?

 でも、大丈夫、心の鍵はしかりと掛けたはずだ……


 平常心で……



 小山さんもこれだけ仕事をさぼっていたのだから、さすがに今日は来ないと思っていたのに、職人達の輪に入り、チラチラとこっちを見ている。

 ハッキリ言って不快だった。


 小山さんからは、何度も連絡があったが、私は電話に出なかった。


 宴会も始まり盛り上がってくると、私は飲み物の注文に追われ忙しく動いていた。


「矢崎さん、お疲れ様…… 本当にいい仕事をありがとう」

 ビールの入ったコップを差し出された先を見ると、佐藤さんのにこやかな笑顔があった。


「お疲れ様でした…… 私なんて何も…… 佐藤さん達の現場の力のお蔭です。私の方こそありがとうございました」


「本当に矢崎さんとの仕事は段取りがいいよ。今日、野川課長は?」

「すみません…… そろそろ来ると思うんですが……」


「そう、それなら良かった」

 佐藤さんは意味あり気な笑みを浮かべた。


 課長が部長に呼ばれたのは、今後の話だろう? 


 大阪に戻ってしまうのだろうか?


 いやいや、気にしてどうする? 


 心の鍵を確認するように胸をきゅっと押え、私は席を立ちトイレへ向かった。