隣国の建国記念式典に出席していた国王陛下と王妃が帰城した。
留守の間、城を守っていたセドリックは、上二人の王女と、腹違いの兄で第一王子のニールと共に、城門まで足を運んで出迎えた。
国王家兄弟の周囲は、王太子軍騎士たちが取り囲んでいる。


城に続く一本道を抜け、城門の対岸に数台の馬車と先導の騎馬隊が姿を現した。
その後に、国王旗をはためかせた一際立派な馬車が続くのを見て、セドリックは一歩前に踏み出す。
彼の隣に、ニールも並ぶ。
二人の王女はそばに控えていた。


石の橋の中間ほどで、御者の鞭の音がやんだ。
手綱を引きながら速度を落としていくのが、足元に伝わる振動からも、車輪の騒音が治まったことからもわかる。
馬車を牽引する馬の足並みがばらつき出し、車体はわずかな惰性の力でセドリックたちの前まで進んだ。


車輪が完全に停止すると、セドリックたちの周りを囲んでいた王太子軍の騎士が馬車に進んだ。
前輪に車輪止めを設置し終えると、そのうち一人の騎士が馬車のドアを開けた。
騎士の手を借り、中から国王が降りてくる。


「父上。長旅、お疲れ様でした。無事なご帰城、何よりです」


セドリックの隣から一歩踏み出したニールが、国王に口上を述べた。
ニールの声を聞いて、国王も彼に顔を向ける。


「留守番ご苦労。変わりはないか」


国王からの返答に、ニールも「はっ」と背筋を伸ばす。