翌日、セドリックは朝から国王に就いて、公務室で国政補佐をしていた。
国王が目を通しサインを入れる前に、セドリックが内容をすべて確認して選別する。
国王の手元に渡す書状は、隣から説明を入れる。
忙しい国王の手を煩わせないよう、それがもっとも効率的な公務の進め方だ。


国王は王太子の仕事ぶりに、全面的な信頼を寄せている。
先に彼が目を通している書状であれば説明を聞かずとも、右から左にサインを進めてしまい、セドリックが熟慮を求めることもしばしばだ。


昼近くになった時、ドアをノックする音が聞こえた。
国王の手元の書状の内容を諳んじていたセドリックが、ピタリと口を閉じる。
国王は書状から顔を上げ、ドアの方に視線を向けた。


「父上。ニールです」

「入れ」


ドアの向こうから名乗った第一王子に、国王は短く返事をする。
国王とセドリックの視線の先で、ドアがゆっくりと開いた。
二人の視線を受けたニールが、恭しく頭を下げる。
彼はドアを閉めると、大股で国王の前まで進んできた。


「たった今、枢密院会議が終了しました」


開口一番でニールが国王に向けた報告に、セドリックも反応してピクリと眉尻を上げる。
国王が「ほう」と言葉を返すのを横目に、ニールはセドリックに真っすぐ視線を向けていた。


「セディ。お前の『第二回お妃選びパーティー』の招待客が決まったぞ」


ニールがからかうように声をあげても、セドリックは表情も変えない。