□沙耶side■




朝。

目覚ましのなる部屋で、一人の少女は飛び起きた。

「眠…」

寝ぼけ眼を擦りながら、制服をクローゼットから取り出して。

「ふあぁぁー」

色気もくそもない、大欠伸をする。

「…」


―…黒橋沙耶。年は、17。

漆黒の長い髪と、漆黒の瞳を持つ、平凡な女子高生。

髪は高く結い上げ、香水とか、女子力高そうな人たちがつけるものは身に付けない女。

否、興味がない女。

「はぁ…」


今日は、始業式。

高校二年生活の始まりの日。

だが、当の沙耶は、やる気なし。

「校長の話、長いだろうなぁ…」

訪れる未来にため息をつき、制服に袖を通せば、丁度良い具合にノックされるドア。

「―…沙耶、起きてる?」

「んー」

ちゃちゃっと制服を着終え、ドアを開ければ、柔らかく微笑む母親が。