「しっかし、お前も須賀も鈍感だよなー…いいのか、こんなんで?」


それは、石井ちゃんの車に乗り込んですぐの事。
石井ちゃんは気だるそうに、片手でネクタイを緩める。


「あー…スーツとか、堅っ苦しくてキライなんだよなー」

「あ。そういえば、石井ちゃんはいつでもクールビズだもんね」

「うるせぇよ」


で?と、その硬そうな張りのある髪に手をやって、石井ちゃんはもう一度私に問い掛けて来る。


「いいのか?あんなんで。須賀のこと」

「だって、だって…私ら別に付き合ってるわけじゃないし。須賀には好きな子…というか、彼女?いるみたいだし…」

「けど、お前は好き、なんだろ?」

「え?…んーー。それを言われると、弱いなぁ。けど、相手、吉田さんじゃねぇ…勝てる気がしない。てか、そもそも勝負にならない?」