―俺、清水 照道。この名前で呼ばれるのは仲間くらいだ。
俺が日常で会話してるのは、幼馴染である沖宮 実衣というお節介な女だけ。


毎朝俺に電話をかけてくるけど、素直に出るのが恥ずかしかった俺は、3コール目で通話ボタンを押す。


《あ、テ》

「……実衣、うるさい。キライ」


プツリと電話を切ると、きっともう一度かけ直すだろうと思いながら、俺は携帯のディスプレイを眺める。

表示された《実衣》にもう一度通話に出ると「あ」と言い掛けた実衣に俺はばっさりと吐き捨てた。


「実衣、キライ」

《て、テルくん! 
もう起きてるんでしょ!?
あたし先に学校行くからねっ》


それは困る。
俺は一方的に切られた携帯を放り出して、寝巻き姿のまま家を飛び出した。


思ったとおり、呆れ顔で俺を見る実衣に、俺はたった一言。


「責任持って家で飯作れ、着替え用意しろ、もう全部やれ」


全然一言じゃなかったけど気にしねぇのが一番だ。