晩御飯を食べ終えると、あたしにヘルメットを渡したテルくんにお礼を伝える。

制服のままバイクに乗るのはあれだから、テルくんのTシャツとジャージを借りることにした。
半袖のはずなのにだぼだぼで、肩からシャツがずり落ちそうになる。テルくん、いつの間にか肩幅まで広くなったんだね。


「…落ちたら放置するからな。掴まっとけ」

「うん、遠慮なく」


今朝みたいに隙間無くテルくんの背中に抱きつけば「胸ねぇ」とまた言う。
あたしが「酷い!」と言っても聞こえないフリをして、バイクのエンジンをつけた。

ヴォンヴォンとエンジン音が響き、きっと近所迷惑だろうなと思った。

テルくんはあたしがちゃんと掴まってるか確認するとき、いつもお腹に回っているあたしの手に触れて、それからようやくバイクを走らせるのだ。


本当にテルくん優しい、けど。バイクを走らせた途端、人格が変わったかのようにニヤリと口角を上げると、バイクのスピードを上げた。