ケータイ小説 野いちご

春が来たら、桜の花びら降らせてね

❁Chapter2❁
雨に癒し、奇跡に笑う


6月。のっぺりとした灰色の雲から、まっすぐに落ちてくる銀色の雨。

関東は先週から、例年より早い梅雨入りをしたと、ニュースが伝えている。

雨に濡れた靴下が、ジメジメして気持ち悪い。

それに耐えながら、下駄箱で上履きに履き替えていると、「はよ、冬菜!」と声をかけられる。

顔を上げれば、笑顔で片手を上げている夏樹君と目が合う。

あ……夏樹君だ。
夏樹君は濡れた前髪を掻き上げながら、私の隣で下駄箱を開けている。

「……あっ、う……」

おはよう、そう言いたいのに……。
上履きに履き替えている夏樹君を見つめながら、今日も声は出ない。

だけど、夏樹君を見て過度に緊張したり、体が強ばるのはだいぶ減ってきていた。

仕方なく、私は心の中で「おはよう」と伝える。

聞こえるわけがないのにと、自嘲的な笑みを浮かべてひとり先に、教室へ向かおうと足を踏み出した瞬間だった。


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