あれはちょうど10年前の高校1年の終わり


当時しつこく告白を繰り返してきたひとつ上の先輩がいた


あの日も呼び出され、いい加減鬱陶しいと言ってやろうと思っていた


指定された体育館の西側は通路から死角になり木が生い茂っているせいで敷地の外からも見えず、当然グランドからも見えないところだった



行ってみるとその先輩の他に4人、連れと思われる先輩がいた


ヤバいと思った時には既に囲まれていて、何を言っても通じる状態ではなかった


引きちぎられたカッターシャツ


中に来ていたキャミソールの上部から覗く傷跡に「うわ気持ち悪っ」と一瞬5人全員が引いた瞬間にカッターシャツの胸元を引き寄せしゃがみ込む


その時体育館の方から聞こえた「先生こっち!」という声に先輩5人は慌てて逃げていった


助かった…



けど溢れる涙は止まらなかった




「さつき」



声の主は私の前に同じようにしゃがみ、私に持っていたジャージをかける



「ごめん気付くのが遅くなって」



バレーボール部員の証である黒のジャージは大きくて腕を通さなくても前のチャックを上まで上げられた


黒い塊と化した私は流れる涙もそのままにグチャグチャなまま顔を上げる