「万引きなんてどうですかね?」

唐突に響が口を開いた。

村岡はむせた。煙草の煙が気管に入ったようだ。

「げほっ!げほっ!アホかお前。中学生やないんやから」

「でも、立派な犯罪ですよ」

「そやけどお前安直すぎへんかそれ?」

「ちょっと変わった万引きです」

「何がやねん?」

「犯行予告をしてからの万引きですよ」

「どーいうことや?」

香が興味を持った顔で言った。

「そんな万引きないもんね。普通こっそりやるものでしょ」

「そう。堂々と店のサイトのホームページに書き込んでから万引きするんです」

少しは納得したが、まだ、腑に落ちないといった様子で村岡はジャックダニエルを飲み干して

「おもろいかもしれへんな。でもそんなことしたら書き込んだ場所とかバレてまうんちゃうか?最近のネット警察は優秀やで」

と、珍しくまともなことを言う。

「大丈夫ですよ。たかが万引きですよ」

響は余裕の表情をうかべる。

「まーせやけども」

「3人で力を合わせて万引きするんです」

「3人で?万引きなんて一人でささっとやればえーんちゃうんか?」

「力を合わせて。それが楽しいんじゃないですか」

「ところでどこで何万引きするの?高い物だよね?」

香が食いつく。香は響の思考に興味津々である。

「あくまで遊びだよ。高い物じゃない。そうだなー、コンビニで面白いものを」

「チープやのー。でも遊びやもんな。コンビニか。で面白い物って?」

「それは香に任せます」

傾けようとしたグラスを止める香。

「私に?」

「そう。香のセンスで。それで、みんなでここに集まって盗んできたものを見る」

「あはは!香、こりゃすべられへんなー」

「ハードル高いね。じゃー、考えとくわ。で、どこのコンビニ狙うの?」

響がニヤリとする。

「それは、これから決めるんだ。一番感じの悪い店を探そう」