十二年前――
 
俺はある屋敷に生まれた普通の子供だった。

しかし少しだけみんなと違うところがあったんだ。それは生まれつき魔力が高かった事だ。

なぜか俺は普通の人が持っている魔力量を遥かに上回って持って生まれてきた。
 
そのせいでよく俺の体は高熱に襲われた。息をするもの苦しくて、酷い日には意識を失うこともあった。
 
両親は名高い医者たちに俺の体を見てもらった。しかしどんなに名高い医者たちでも、みんな同じく頭を左右に振っただけだった。

「お兄様。お体の方は大丈夫ですか?」

「起きてて大丈夫なの?」
 
苦しい日々を送っていても、俺には心の支えがあった。

「お見舞いに来てくれてありがとう。ミリィ、レオンハルト、セシル」
 
俺はベッドに横になったまま微笑んだ。

「情けないな。また倒れたらしいじゃないか」
 
セシルの隣に居るレオンハルトが溜め息を吐いた。そんなレオンハルトに申し訳なさそうに思いながら言う。

「ごめんレオンハルト。森に遊びに行くって約束破っちゃって」

「そんなの別に良いよ。森なんていつでも遊びに行けるんだから」
 
何だかんだ言って、レオンハルトもよく俺の事を心配してくれていた。

迷惑を掛ける事もたくさんあったのに、あいつは嫌な顔一つせず俺に付き添ってくれた。ほんとにあいつには色々と助けられたよ。

「お兄様。何か飲み物でも持ってきますか?」

「うん、お願いセシル」

セシルは三つ離れた俺の妹だ。
 
セシルは良く出来た子で俺には勿体無い妹だった。可愛い顔立ちで、優しくて素直な子で、とても純粋な子だった。