「美味しい……!」
 
真っ赤な苺がのったショートケーキを一口食べたオフィーリアは小さく歓声をあげた。

「だろ?」
 
俺がオフィーリアを連れてきたカフェは、この街で一番有名なパティシエが作ると言うケーキ専門店――【スイート・ハーモニー】だ。

一応ケーキ専門店だが店の中はカフェにもなっている。その場で買ったケーキを食べながらお茶を楽しむ事が出来る一石二鳥のお店なんだ。

「この世界にこんな美味しいものがあるだなんて」
 
オフィーリアは瞳を輝かせながらもう一口ケーキを口に運ぶ。

「どんどん食べてくれ。これは俺の奢りなんだからな」
 
そう、今日は俺が奢る事になっている。理由は一つ――オフィーリアがお金を持っていないからだ。そう思うと今まで何を食べて過ごして来たのやら。

「なあ、オフィーリアって今まで何を食べて育ったわけ?」
 
その癖一つない白銀の髪に真っ白は肌に映える桃色の唇を、保つだけの物を食べてきたのだろう。ミリィが知ったら絶対羨ましがるに決まってる。

「動物の肉や主に木の実よ」

「ど、動物の肉と木の実!」
 
ま、まじか……。そりゃあお金なんて持ってるはずがないな。

「魔法とか使って調理したのか?」

「あなたと違って私は魔法には頼らないの。動物を狩って調理するまで全て自分でやってるわよ」

「な、何てサバイバルな……」
 
彼女がどうして強いのかなんとなく分かった気がした。