「……ここは？」
　
目を開くと私は草原の上に立っていて、上を見上げると空にはどんよりとした雲が広がっている。
　
見たことのない景色が目の前に広がっていて、ただ一目見て分かることは、この世界は灰色と言う一色の色で覆われていることだった。

「……どうしてこんなところに？」
　
私は覚悟を決めて歩き始める。
　
確か私はガンマに捕まったはずだった。でも目を開けば別の場所に立っていた。ここは誰かの記憶の中なのだろうか？
　
まるで時間が止められているかのように、何かが動いているようには見えなかった。ただここから見える物があるとすれば。

「……人？」
　
ここから少し離れた丘の先に、誰かがうずくまって居るのが見えた。

「誰だろう？」
　
気になってそこへ向かおうとした時、私の胸元になる星の涙が何かに反応するように微かに輝く。

「星の涙？」
　
その光は今まで見てきた光の中でとても優しく温もりのあるものだった。

「あの人が気になるのですか？」
　
私の質問に応えるように、星の涙はうずくまっている人に向かって光を放つ。

「……」
　
その光に導かれるように、私はその人に向かって歩き出す。
　
うずくまっている人に少しずつ近づいて行くと、その人の姿がはっきりと見えてきた。

うずくまっているように見えたその人の姿は、剣を地面に刺している姿だったのだ。

「どうして剣を？」
　
その人は目を閉じている。まるで眠っているかのように。
　
すると星の涙はそんな彼の頬を優しくそっと照らす。

「うっ……」

「っ！」
　
そのとき微かに声が聞こえた。

「ま、まさか……生きてるの？」
　
私はとっさにその人から離れる。

「え、あ…………」
　
彼がその名前を呼んだことを私は聞き逃さなかった。

「エア……って」
　
もしかしてこの人はエアが選んだ守護者の一人なのだろうか？　だとしたら何でこんなところに？　

守護者は全員魔剣としてこの世界に落とされたはずなのに。