ここまで追い詰められたレオンハルトを見たのは初めてだった。

今までもミリィの事となると人一倍敏感に反応していたが、今日はいつも以上におかしい様子を見せている。それは道化師が絡んでいる可能性もあるからだろう。

それに俺はレオンハルトなら、必ずミリィを見つけてくれると期待していた。

レオンハルトは迷子になったミリィを見つけるのが得意だったし、【なら今回も】とつい思ってしまったんだ。
 
俺はそんな事を少しでも思った自分を殴り飛ばしたかったよ。結局俺はずっとレオンハルトを頼りしていたんだから。

「レオンハルト。いい加減に休まないと!」

「まだ行ける!!」
 
長時間探し続けたせいでレオンハルトの息は上がっている。
 
怪我だって完璧に完治したわけじゃないだろうし、これ以上レオンハルトの体に負担を掛けさせるわけにはいかない。

「ミューズ。レオンハルトを連れて帰ってくれないか?」

「で、でも」
 
ミューズはレオンハルトに目を向ける。

「これ以上、レオンハルトにミリィの捜索は頼めない」
 
俺の言葉に反応したレオンハルトの肩が上がる。

「おい……ブラッド。それはどういう意味だ?」
 
低い声で言いながらレオンハルトはゆっくりと立ち上がる。拳に力を込めると力強く叫んだ。

「ブラッド!! どういう意味か応えろ!!」

前髪の下からギロリと睨みつけてくるレオンハルトを、目を細めて見つめる俺は躊躇わずに言う。

「今のお前じゃもう限界なんだよ」

「っ!」
 
オフィーリアの隣を通り過ぎレオンハルトの前に立つ。

「ひっでぇ面だよな。ミリィが今のお前見たらなんて言うか」

「そんなことはどうでも良いんだ! 今はミリィを見つけるのが」

「いい加減にしろよ、レオンハルト!!」
 
必死に俺の中で抑えていた感情の鎖が解け、俺はレオンハルトの頬を思い切り殴る。殴られたレオンハルトの体は後ろの壁へと打ち付けられる。