あの事件から三日が経った夜。

「さてと」
 
俺は女神の涙宛に送る予告状を考えていた。
 
依頼を受けたからには早くこなして、宝石を元の持ち主に返さないといけない。

それにマナティが一日でも早く話せるようになってくれたら嬉しい。そう思いながら右手にペンを持つ。

「今宵、乙女が持ちしルビーのペンダントを盗みに参上いたします。怪盗レッドアイ──」
 
書き終えた文面を見下ろし考える。これはこれで良いんだが何か物足りない。

「う〜ん、他に言葉が思い浮かばない」
 
こういう時、物書きを仕事としている奴はスラスラと書くことが出来るんだろうな。センスだってあるはずだ。
 
そして生憎にも俺はこういうことが苦手だ。文章なんて考えるだけで頭痛が走る。

やっぱり自分で考えるよりも、誰かが考えた物を読む方が性に合っている。

「ま、今日は良いか……」
 
そう呟き立ち上がって後ろを振り返る。そこにはベッドで小さく寝息を立てながら眠っているオフィーリアの姿がある。

「本当にぐっすり眠っているな」
 
それはそれで凄く安心するけど、逆に俺は寝るどころではない。

寝返りを打てば目の前に彼女の顔があるし、離れたら離れたで近づいてくるし、そのせいでここ三日まともに眠れていない。

おかげで目の下には薄っすらと隈が出来てしまっている。
 
本来なら別々のベッドで寝るべきだ。部屋にはベッドが二つちゃんとあるし、別々で寝られるようにはなっている。

でもオフィーリアが。

「一緒に寝たい」
 
なんて言うから、俺は理性を保ちつつ仮眠程度に寝ている。
 
外だって真っ暗だ。まだベッドに潜り込む勇気が持てない。

「流石に三日まともに眠れないのは体がきついな……。今日は空いているベッドで寝よう」
 
軽く息を吐きベッドに入り込む。