小一時間も食事をし、適当に世間話をすると、


「ごちそうさま」


朝菜さんが席を立った。
匡次さんも席を立つ。


「出ましょうか」


「えっ??あっ、はい……」


なんだろう。
この示し合わせた空気は。
何だかわからないけれど、試されている気はした。


そして店の外に出て、大通りまで行くと、朝菜さんはタクシーを拾った。


「じゃあ、あとは宜しく」


「はい。承知しました」


これは接待か?!
固まったままお辞儀して見送る私。


「……あの、これは」


私に関して、何を聞かれることもなく、会社はどうだといった事務的な会話が何度か交わされ、ただただ黙々と食事しただけの時間だった。